ハンブルク・バレエ 日本公演   in  2005

1月27日ー2月20日

1月27日(木) 6:30 p.m.
1月28日(金) 6:30 p.m.
横浜  神奈川県民ホール 眠りの森の美女
1月31日(月)  7:00 p.m. 東京  オーチャード・ホール 冬の旅
2月3日(木)   6:30 p.m.
2月4日(金)   6:30 p.m.
東京  文化会館 ニジンスキー
2月7日(月)   6:30 p.m. 神戸  国際会館 ニジンスキー
2月9日(水)   6:30 p.m. 広島  厚生年金会館 冬の旅
2月12日(土)  6:30 p.m. 福岡  サン・パレス 眠りの森の美女
2月14日(月)  6:30 p.m. 大阪  フェスティバル・ホール 眠りの森の美女
2月17日(木)  1:30 p.m.
             6:30 p.m.
東京  NHKホール 眠りの森の美女
2月20日(日)  2:00 p.m. 名古屋 市民会館 冬の旅


Casting

眠れる森の美女   冬の旅   ニジンスキー



新聞・雑誌記事から



眠れる森の美女

1 27/1
横浜
28/1
横浜
12/2
福岡
14/2
大阪
17/2(M)
東京
17/2(S)
東京
オーロラ姫 シルヴィア・アッツォーニ バルボラ・コホウトコヴァ ジョエル・ブーローニュ ジョエル・ブーローニュ バルボラ・コホウトコヴァ シルヴィア・アッツォーニ
デジレ王子 イリ・ブベニチェク イヴァン・ウルバン アレクサンドル・リアブコ アレクサンドル・リアブコ イヴァン・ウルバン イリ・ブベニチェク
善の精 へザー・ユルゲンセン ラウラ・カッツァニガ シルヴィア・アッツォーニ シルヴィア・アッツォーニ ラウラ・カッツァニガ へザー・ユルゲンセン
悪の精 オットー・ブベニチェク ピーター・ディングル ピーター・ディングル カーステン・ユング カーステン・ユング カーステン・ユング
カタラブット アレクサンドル・リアブコ アルセン・メグラビアン ヨハン・ステグリ ヨハン・ステグリ ヨハン・ステグリ アレクサンドル・リアブコ
フロリナ姫 エレン・ブシェー シルヴィア・アッツォーニ エレン・ブシェー エレン・ブシェー エレン・ブシェー
王妃 ラウラ・カッツァニガ ゲイレン・ジョンストン ゲイレン・ジョンストン ゲイレン・ジョンストン ラウラ・カッツァニガ
セバスチャン・ティル ヤロスラフ・イヴァネンコ ヤロスラフ・イヴァネンコ ロリス・ボナーニ セバスチャン・ティル

casting

冬の旅

1 31/1
Tokyo
9/2
Hiroshima
20/2
Nagoya
さすらい人 服部有吉
シルヴィア・アッツォーニ、ジョエル・ブーローニュ、
エレン・ブシュー、オットー・ブベニチェク、
ラウラ・カッツァニガ、ゲイレン・ジョンストン、
カーステン・ユング、ニウルカ・モレド、
アレクサンドル・リアブゴ、ロイド・リギンズ、
セバスチャン・ティル、マリアナ・ザノット
服部有吉
アーニャ・ベーレント、エレン・ブシュー、
オットー・ブベニチェク、ピーター・ディングル、
ニウルカ・モレド、アンナ・ハウレット、
へザー・ユルゲンセン、アンナ・ポリカルポヴァ、
ロイド・リギンズ、ヨハン・ステグリ
セバスチャン・ティル、マリアナ・ザノット
服部有吉
シルヴィア・アッツォーニ、ジョエル・ブーローニュ、
エレン・ブシュー、オットー・ブベニチェク、
ラウラ・カッツァニガ、ゲイレン・ジョンストン、
カーステン・ユング、ニウルカ・モレド、
アレクサンドル・リアブゴ、ロイド・リギンズ、
セバスチャン・ティル、マリアナ・ザノット
冬のさすらい人を照らす明るい影 1 1 アーニャ・ベーレント、オデッテ・ボルヒェート、
ジョルジーナ・ボルトハースト、クリステル・チェネレリ、
フィリパ・クック、カトリーヌ・デュモン、
アンナ・ハウレット、ステラ・カナトーリ、
リサ・トッド、ディナ・ザリポヴァ

ジョセフ・エイキントン、アントン・アレクサンドロフ、
ロリス・ボナニ、ティアゴ・ボーディン、
ボイコ・ドセフ、エミル・ファスフッディノフ、
アンドリュー・ホール、ヨロスラフ・イヴァネンコ、
アルセン・メグラビアン、エドウィン・レヴァツォフ
der andere, auf dem WEG ジョン・ノイマイヤー ジョン・ノイマイヤー ジョン・ノイマイヤー

casting

ニジンスキー

1 3/2
東京
4/2
東京
7/2
神戸
ヴァスラフ・ニジンスキー イリ・ブベニチェク アレクサンドル・リアブコ アレクサンドル・リアブコ
ロモラ・ニジンスキー、妻 アンナ・ポリカルポヴァ へザー・ユルゲンセン アンナ・ポリカルポヴァ
ブロニスラヴァ・ニジンスカ、妹 ニウルカ・モレド ニウルカ・モレド ニウルカ・モレド
スタニスラフ・ニジンスキー、兄 服部有吉 服部有吉 服部有吉
セルゲイ・ディアギレフ イヴァン・ウルバン ロイド・リギンズ イヴァン・ウルバン
エレオノーラ・べレダ、母 ジョエル・ブーローニュ ジョエル・ブーローニュ ジョエル・ブーローニュ
トマス・ニジンスキー、父 カーステン・ユング ピーター・ディングル カーステン・ユング
バレリーナ、タマラ・カルサヴィーナ へザー・ユルゲンセン ラウラ・カッツァニガ へザー・ユルゲンセン
新人ダンサー、レオニード・マシーン ロリス・ボナーニ ロリス・ボナーニ ティアゴ・ボーディン
Nijinsky - The dancer 1 1 1
as Arlequin in "Carnaval" アレクサンドル・リアブコ
後に アルセン・メグラビアン
アルセン・メグラビアン
後に ヨハン・ステグリ
アルセン・メグラビアン
後に ヨハン・ステグリ
as the spirit of the rose
in "Le Spectre de la rose"
アレクサンドル・リアブコ アルセン・メグラビアン アルセン・メグラビアン
as the Golden Slave in "Sheherazade" オットー・ブベニチェク オットー・ブベニチェク オットー・ブベニチェク
as the Young Man in "Jeux" ロリス・ボナーニ ロリス・ボナーニ ティアゴ・ボーディン
as the Faun in "L'Apres-midi d'un faune" オットー・ブベニチェク
後に カーステン・ユング
オットー・ブベニチェク
後に カーステン・ユング
オットー・ブベニチェク
後に カーステン・ユング
as Petrushka in "Petrushka" ロイド・リギンズ イヴァン・ウルバン ロイド・リギンズ
Nijinsky's shadow アレクサンドル・リアブコ
服部有吉
服部有吉
アルセン・メグラビアン
服部有吉
アルセン・メグラビアン

casting


新聞・雑誌記事から

2005年2月9日(水)、東京新聞
ハンブルク・バレエ 「冬の旅」  (福田一平、舞踊評論家)

現代の舞踊作家ジョン・ノイマイヤーが率いる、ドイツのハンブルク・バレエが、五度目の来日公演を行った。この人らしい純粋な孤独の告白を描いた問題作、シューベルトの連作歌曲集を舞踊化した「冬の旅」を見た。
舞台を前に張り出した雪の道を、傘をさして下手前から歩いて行く、寒々とした男の姿から始まる。舞台奥にはバックいっぱいに、人の顔を並べたパネルが飾られている。
どんな旅も、こうした多くの人々との出会いによる、との意味にも取れる。そのバックに一つのドアがあり、多くの人々が出入りする。なかなか洒落た構図である。
このバレエ団の日本人の青年役(服部有吉)のイメージを軸に作られたと、ノイマイヤーは語っているが、これは決して一人の男だけの問題でなく、出演者たちすべてが持つ、現代の不安、焦燥、絶望を、そのダンスの中に浮き上がらせていく。舞台は、暗く寒い。青年の気持ちが、そのまま伝わる演出である。
それでいて、舞踊の形象が爽やかな場面を現出する。青年が美しい女性と、階段を使って踊るシーン(菩提樹)は幻想的だが、ほっとする救いがある。人々は愛し合い、別れて、刹那的に時を刻む。青年は人々と一緒になったり、一人になったりして、自分の切々たる気持ちを踊る。バックの映像の上に雨が降りしきる情景、白い鞄を提げた雪の中の旅人の、詩的情感が不思議な現代の心象を綴っていく。
ラストのノイマイヤー扮する辻音楽師と、青年が踊るシーンは、痛々しい優しさに溢れていた。きっと作者は、この二人の交情に、すべてをかけていたのではないかと思われる程であった。奥深い、問いかけの傑作である。
(掲載の写真は「辻音楽師」のシーン、ジョン・ノイマイヤー、服部有吉)



2005年2月10日(木)、朝日新聞
ハンブルク・バレエ団「冬の旅」 (山野博大、舞踊評論家)
雪景色を異化する日本の少年

(やまの・はくだい、36年生まれ。埼玉全国舞踊コンクール、あきた全国舞踊祭などで審査員を務める。朝日新聞舞台芸術賞選考委員)

−同時多発テロの影も−
 ハンブルク・バレエ団はドイツで17世紀に創設された。その芸術監督を73年から務めるジョン・ノイマイヤーは、42年米国生まれ。創作は100以上に上る。古典バレエの現代的アレンジ、交響曲を視覚化する振り付け、演劇的手法の採用などで知られる。代表作に「くるみ割り人形」「椿姫」「マーラー/交響曲第3番」など。
 バレエ「冬の旅」で使ったハンス・ツェンダーの編曲についてノイマイヤーは「不安、信頼の喪失、緊迫感を表す曲だ」とコメントしている。初演は2001年12月で、その年の9.11同時多発テロ事件の影響も受けたという。


 ジョン・ノイマイヤーがシューベルトの「冬の旅」をバレエ化した舞台には、寒そうな雪景色が広がっていた。
 今回のハンブルク・バレエ団日本公演の演目には、彼がシューベルトの歌曲ではなくハンス・ツェンダーの編曲を使って2001年に創作した「冬の旅」が入っていた。その編曲は2002年の《東京の夏》音楽祭で紹介され、編曲の領域を逸脱した編曲ぶりに賛否両論の声があがったといういわく付のものだった。
 舞台から客席に張り出すかっこうで作られた雪道を山高帽に黒いトレンチコートの紳士がこうもり傘をさしてゆっくりと横切る。途中で立ち止まり、帽子や肩に積もった雪を払い落とす。ツェンダーの「編曲」がごくしぜんに何げない風景に寄り添っている。その後も雪を踏みしだくような音や、風の音などがあちこちで聞こえ、シューベルトの視覚化というノイマイヤーの仕事を側面からしっかりと助けているように見えた。
 しかしこの編曲はバレエの出来る8年も前の1993年に出来ているのだ。ツェンダーの「冬の旅」の精神的な内容を視覚的なものへと解き放つ試みが、ノイマイヤーのニーズにぴたりと合致したようだ。
 舞台前面に顔写真をたくさん並べた幕が下がっている。その幕が上がる。しかし舞台の奥にも同様の顔写真の列が見えているので、何も変化がなかったような印象を受ける。黒いドアがあり、その奥から一人の少年が顔を出す。大きな荷物を手前に入れようとするのだが、ついにあきらめて自分だけの登場となる。
 ノイマイヤーは「例えば、黒いトレンチコートを着て傘をさしたミステリアスで夢見がちな男が、ぶかぶかのプルオーバーを着て眼鏡をかけた小さな日本人の男の子にであったら」と書いている。彼は予定されたストーリーをバレエに作ることよりも、偶然の出会いがもたらす成り行きに従おうと決意を固めて「冬の旅」へと旅立ったようだ。
 日本人の男の子の役は、初演以来ずっと服部有吉(1999年にハンブルク・バレエ団入団)が踊っている。ノイマイヤーの「冬の旅」は、欧米のダンサーにない服部の持ち味をヒントに、その個性発散するエネルギーを増幅して完成したものと言ってよい。
 ウィルヘルム・ミュラーの詩によるこの24曲から成る歌曲集には、恋に破れた若者の心象風景が一こまずつ描かれており、それが当時のシューベルトを取り巻くさまざまな苦しみと共鳴している。
 しかしノイマイヤーのバレエは、その背景となる陰鬱な冬の街角に異質な男の子を投げ込むと何が起こるかということの方にむしろ主眼を置いていて、それが個々の舞踊的な見せ場を形作っていた。どの場面でも男の子は別の世界からの闖入者だった。
 終曲の「辻音楽師」はノイマイヤー自身が演じた。客席に張り出した雪道の途中で立ち止まり、オープニングのトレンチコートの紳士と同じように、肩に積もった雪を払い落とす。このうらぶれた辻音楽師ははじまりの紳士のなれの果ての姿なのだろうか。
 ひとりぼっちの辻音楽師と男の子とのしみじみとした出会いのシーンがある。しかし男の子は入ってきたドアから飛び出してそのまま行ってしまう。背景に並ぶ顔写真が、何かの災害に見舞われて行方不明になった人たちのものと重なる。現代の「冬の旅」には、災害に出合って消えてしまった者と残された者との風景が広がっていた。
(掲載の舞台写真はMIN-ON提供のもので服部有吉とノイマイヤーの「辻音楽師」のシーン。1月31日東京・渋谷・Bunakmuraでの公演)



2005年2月12日(土)、東京新聞
ジョン・ノイマイヤー&ハンブルク・バレエ総評  (佐々木涼子、東京女子大学教授、フランス音楽、舞踊評論)
時代への深い認識
ー天才の虚実の絵模様、不透明な現代を暗示ー


正統的なバレエの流れを汲む三人の振付家としてフォーサイス、キリアン、ノイマイヤーは並び称されることが多いが、中でもノイマイヤーは古典の骨格を持ったドラマティックなバレエを創作する点で、他のふたりの先鋭的な先駆性とはやや異にすると見なされてきた。
しかしノイマイヤーが率いるハンブルク・バレエの今回の来日公演は、上演された三演目『眠れる森の美女』『ニジンスキー』『冬の旅』のいずれにおいても、時代への深い認識がうかがわれて、ノイマイヤーならではの現代性、同時代性を感じることができた。
『眠れる森の美女』は、バレエでは最も知られた古典の一つ。プティパによる原典(1980年初演)ではヒロインが眠り続ける百年を17世紀から18世紀にわたる期間としている。チャイコフスキーの音楽もその時代差と様式を考えて作曲されているが、今回のノイマイヤーの改訂版(1978年初演)は、その新旧二つの時代を現代と19世紀末にしている。
ジーパンをはいた現代青年が森の中でタイムトンネルに迷い込み、古めかしいロイヤル・ファミリーの姫君の誕生パーティーに出くわす。そこで催される余興にはプティパ原典の踊りが用いられ、現代バレエとプティパの時代のバレエとが対比されて、時の流れを感じさせるという仕組みである。プティパ振り付けとノイマイヤー振付が交錯する舞台は、演劇的な重みのある情景を幻想の枠組みでつつんで美しいが、それ自体がバレエ史への具体的な歴史批判になっていて興味深い。
『ニジンスキー』は、世界的な名声を博した天才的ダンサーの生涯を描く二幕バレエである。ヨーロッパといわず、全世界で一世を風靡したロシア・バレエ団のスターは、私生活でも謎の多い人物だったが、ことバレエに関しては、その活躍の短い期間を通して、片や古典バレエの希代の名手であり、同時に時代を先駆ける斬新な振付家でもあった。
ノイマイヤーは、おそらくは同じ舞踊人としての共感から、一人の人間のなかに存在した時代の乖離に着目する。ダンサーとして、また舞踊作家として異なる時代を生きる人格の分裂は、妻ロモラの眼にさえ、何人ものニジンスキーを生むことになる。その多人格性を舞台化するためにバレエ『ニジンスキー』は、主役の周囲に彼と深い関係を持った人々や彼の苦悩する分身、踊った役柄などを絡ませ、天才の光と影、虚と実の交錯する絵模様を描く。
それだけではない。第一次世界大戦の国際関係に翻弄され更なる苦境に追いつめられるニジンスキーを通じて、まさに現代の先行き不透明な状況をも暗示するのだ。登場する人物の交流するさまも表現力が豊かで説得性があるが、さらに抽象的な心理状況を描くグループの踊りが創意にあふれ、見応えがあった。
『冬の旅』は、よく知られたシューベルトの歌曲を、ハンス・ツェンダーが現代的な精神解釈と音楽技法でオーケストラに編曲した、その音楽に振り付けたバレエである。
純粋がなるゆえに人とのつながりと温もりを失った孤独なさすらい人を、ノイマイヤーは異文化の衝突とテロの恐怖に揺らぐ現代のものとして描く。
服部有吉を主役として振り付けた時にノイマイヤーの中にあった無垢と孤絶のイメージは、ロマン派的『冬の旅』とは少々異質だが、それに優る説得力を持ってもいる。もう一人のさすらい人を初演時と同様にノイマイヤー自身が踊って、ふたりの重奏と隔絶を感じさせ、奥行きを感じさせる。振付はシャープで斬新な切り口を持ち、装置や演出にも工夫があって感銘の深い作品だ。
(掲載の写真は『眠れる森の美女』、写真がはっきりしていなくてよくわからないのですがオーロラが倒れて善の精が出てくるところかしら?
一番大きい写真の『ニジンスキー』はヴァスラフとロモラのそりのシーン。アンナ・ポリカルポヴァ、イリ・ブベニチェク。
『冬の旅』は「辻音楽師」のシーン。ジョン・ノイマイヤー、服部有吉)
※これは執筆者の勘違いで、初演はイヴァン・ウルバンが踊っている。(sachikom)



2005年4月4日(月)、朝日新聞夕刊
ハンブルク・バレエ団 ノイマイヤー芸術監督に聞く
「創造の源、直感が作用」−「9.11」が変えた「冬の旅」の展開−


ハンブルク・バレエ団が、「眠れる森の美女」 「冬の旅」 「ニジンスキー」 という3演目をひっさげた8年ぶりの来日公演で、鮮烈な舞台を披露した。古典の新解釈であれ創作物であれ、常に我々が生きる「今」を鋭く照射するジョン・ノイマイヤー芸術監督に聞いた。(上坂樹)

 3作品の中で、とりわけ衝撃的だったのが、シューベルトの名歌曲を舞踊化した「冬の旅」だった。しかも、通常演奏されるピアノ伴奏版ではなく、ドイツの現代作曲家ハンス・ツェンダーが管弦楽伴奏版に編曲した曲を用い、服部有吉を中心にしたダンサーたちのアンサンブルで現代人の孤独をあぶりだして見せた。
 「古典を現代の視点から再創造したツェンダーの行為はバレエにも通じるもので、彼の音楽にはとても感銘を受けた。ツェンダーの音楽によって、一人の若者の孤独をより大きな世界に拡大し、人間の感情をより多様化して表現することができました」
 最初のリハーサルを行ったのが2001年9月11日。その日、世界を震撼させたニューヨークでの同時多発テロを知った。「芸術家の感情は生きている時代に色付けられるもの。この時から、作品作りは確かに違う展開をたどった」という。
 歌曲「冬の旅」は、ノイマイヤーには「奇妙で親しみのある世界からの自己の亡命」と映る。9.11を経験することで、それは行きどころを失った現代人の不安と焦燥を表す、新しい意味を付与されたという。
 「冬の旅」と同じく、日本初演となった「ニジンスキー」への思いも深い。振付家としてのニジンスキーに共鳴し、ゆかりの品々の収集家としても知られる。2000年にパリのオルセー美術館で行われたニジンスキー展には、様々な画家が描いたニジンスキーの肖像を提供し、話題になった。
 「彼は並外れて優れたダンサーだったが、自分の振り付けでは名人芸を見せびらかさず、厳しい芸術的ビジョンだけを表現している。心の病が現れた後に書いた手記に見えるのは自分が生きている時代への不安で、これが一人の芸術家の心に集約されていたという事実に心打たれます」
 インタビュー中に、何度も「創造の源には直感が大きく作用している。踊りの一つ一つにどんな意味があるかは、私にも説明できない」と繰り返した。
 踊りそのものが豊潤な物語を生み出す、ノイマイヤーらしい言葉だった。
(掲載の写真はノイマイヤーのポートレート。その下に、「ニジンスキーの中には、彼が生きた時代の不安が凝縮されていた」と語るジョン・ノイマイヤー、と書かれています。写真は竹原伸治氏。)



2005年2月24日(木) The Daily Yomiuri
Neumeier dancing along with the world on its journey  (by Mikiko Miyakawa, Daily Yomiuri Staff writer)

For John Neumeier, artistic director of the Hamburg Ballet in Germany, creating dance is always instinctive, and significant events of the world we live in are often source of his inspirations.
For example, the uncertainty the world has been undergoing since the Sept. 11, 2001, attacks on the United States influenced the creation of his masterpiece ballet, Winterreise(Winter Journey). Neumeier recently performed this piece in Japan, along with the Sleeping Beauty and a tribute called Nijinsky.
"I felt after Sept. 11 that the world has on a kind of journey, particularly because of the dimensions of this catastrophe in a country which had never been attacked," Neumeier said in an interview during his recent tour in Japan. "Everyone was unsure, and I think there is this feeling in this piece."
Neumeier, who has been leading the company for more than 30 years now, is known as one of the greatest modern choreographers for his revised versions of classical ballets and new works, such as The Saga of KIng Arthur, The Lady of the Camellias and Death in Venice.
The title of Winterreise was taken from the well-known collection of songs by Franz Schubert that focus on a young man's lost love, although Neumeier used composer Hanz Zender's interpretation of Schubert's music, which inspired him to produce the work in the first place.
Neumeier said he had "a very strong emotional reaction" to the work, adding that while he found the text of Winterreise by Wilhelm Mueller so fascinating, it was very mysterious at the same time.
"It is not clear what the lyrics to each song mean. But it is very beautiful, and it's very touching," he said.
Winterreise would not have taken its current form if not for the terrorist attacks. The world premiere of Winterreise was already scheduled well before the incident, but the tragedy inevitably affected Neumeier's production process.
"Even if you have a theme, you do not know what will happen in the work of creation," he said. "Of course, when a great event happens in the world you live in, this has to be reflected in the work."
Neumeier thinks the main theme of the work is "homelessness" because the image of a house often apears in Mueller's text.
"He speaks about the house, sometimes how nice it would be to be in the house, but sometimes he doesn't want to be in the house. So I think the theme is really about being gone from your home, being on a journey," he said.
At the end of the production, Neumeier took to the stage himself and danced with Hattori as Der Leiermann (The Organ Grinder), a highlight of the show.
The Hamburg Ballet brought Winterreise to Hiroshima, and Neumeier felt that the piece had been more enthusiastically received by people in that city than those in Tokyo.
"The visit to Hiroshima, as as American, has always been deeply moving since our first visit, when we brought St. Matthew Passion, " U.S.-born Neumeier said. "Since then, we had made a very special choice of what work will be shown in Hiroshima."
Neumeier was very pleased that difficult works such as Winterreise and Nijinsky were so well received in Japan.
"They are certainly in the line of works which is more serious and more dealing with human and world themes," he said.
Nijinsky is about the legendary Russian dancer Vaslav Nijinsky, whom Neumeier respects as a pioneer of modern choreography.
Neumeier decided to create the piece to mark the 50th anniversary of the dancer's death in 1950.
"Ny homage to Nijinsky must be a work of my own, so I decided to do the work," he said.
He brought the work to Japan because it has been well received in many places, including St. Petersburg, Paris and New York, and he believes this piece represents the style of his ballet in the 21st century.
"I think Nijinsky is certainly one of my favorite works, and a work which has taken very long to be prepared in my mind, in my heart in a sense. And it is the work, I would say, in recent years, which also has the greatest public popularuty, " he said. "Whichever culture and whichever relationship people might have with the genius of Nijinsky, there has been a great emotional response to this work."
The production starts with a sense of his last performance in the Suvretta-Haus, a hotel in St. Moritz, Switzerland, in 1919 and ends with the same scene. The production shows the images Nijinsky is supposed to have mentally seen during this performance, from his childhood, to his glorious days at Les Ballets Russes, with Serge Diaghilev, to the violence of World War 1.
"It was important to find one moment, one point of departure to give unity to the work," Neumeier said.
Neumeier believes that it was a moment when many things came together, such as his madness, the uniqueness of his modern dance, the brutality and aggression of World War 1, and his relationship with his wife.
"It was a moment of professional starvation, because he had not danced for a long time, and I think that from that distance of starvation, he looked back to glorious days of Les Ballets Russes, which must have been particularly vivid, strong."
Asked about what choreographers have influenced of the concept of psychological ballet - the observation of the emotional gesture combined with classical technique to add a new texture to the form of ballet.
He also named Jerome Robbins, renowned for pieces created for the New York City Ballet, and American modern dance choreographer Sybil Shearer.
"From the point of view of movement invention, she was very influential in my development, more than I knew when I was working with her. But I realized it later, as I continued to work more and more that I owe very much ti her sense of invention," he said.
Currently, Neumeier is working on a production of The Little Mermaid commissioned by the Royal Danish Ballet to help mark the 200th anniversary of the birth of Hans Christian Andersen. The plan is to premiere the production in April.
(小さい写真が2枚。1枚はノイマイヤーのポートレイト。1枚はニジンスキーのシーンで、光の環の奥にニジンスキーが椅子に腰掛けている。大きい写真が1枚。これは冬の旅の最後のシーンで服部有吉が正座して中腰になったノイマイヤーの太鼓の撥を受け取っている。ステージ写真は民音が提供したもの。ポートレイトについては不明。)